不思議なお話
これは私が高校の頃の同級生の友人から聞いた話です・・・・
その友人の親の田舎での出来事。
その子の田舎はかなりの旧家で昔はかなりの財をなしていたそうで、今でも広い立派なお屋敷のような所。
しかしその友人の子はあまりその屋敷に行くのは好きでは無かったようです。
田舎の大きな歴史のある家といえば必ずといって部屋の上の方に亡くなった方の写真が並べられているものです。
その子はその並んだ写真、その中の一枚・・・・その子の曾曾お婆さんの写真がどうも好きではないらしい。
確かに白髪で眼鏡をかけ・・なにやら厳しい顔をしているように見える・・・。
それもそのはずで、そのお婆さんは昔の女学校で教師をしていて、とても厳しい人だったらしいです。
その子はその部屋に飾られた写真を見るたびに毎回怒られている様な気持ちになるのです。
そしてその事はその子が小学校6年だか5年の頃の夏休み、両親と共にこの田舎の屋敷に遊びに来た時に起こりました
その子は田舎の川で、弟や従兄弟達とで、泳いだり、魚を捕まえたりしていました。
その子は泳ぎが大好きで、従兄弟たちの制止も振り切り、一人上流へ泳いでいきました。
「もう帰ろうかと」思ったとき、突然川の中で足がつってしまい 彼は溺れてしまいました。
その子の帰りが遅いのを心配した従兄弟たちが心配して、上流にやってくるとその子は川の中で溺れ、もがいています。
偶然地元の農家の方が通りかかり、その子を川から救い出しました。
しかし、助けられた時は既に意識が無く、熱もあるようでした。
従兄弟たちはその子をとりあえず屋敷におぶって帰りました。 命に別状は無かったもののひどい熱にうなされています
その子は「あの」額縁の部屋に寝かされました。 熱にうなされ、どのぐらいの時間がたったのだろう
もう、辺りは真っ暗で、月明かりだけが唯一の明かりでした。
「うう・・苦しい」その子はうなされていますが、従兄弟や両親たちはもう寝てしまったのか、もう誰も起きてはいないようです
熱のためか起きているとも寝ているともつかない
その時です。誰かがその子の額に手をやり、声をかけている・・・白く、軟らかい手で、何と言っているか分からないが、何か安心する
・・・・顔を見ると・・・『おばあちゃん?』
いや、その子のお婆さんに似てはいないし・・・お婆さんは既に半年前に亡くなった・・・
誰かに似ている・・・・ その子を見るその老婆のまなざしは優しい笑顔でした。
その子はとても安心した気持ちになり、そのまま朝まで眠ってしまいました。
次の日・・その子の熱は無かったかの様に消え、元気を取り戻しました。
そして、夏休みが終わりに近づき、家に帰る日、その子はまた額縁に目をやりました。
そして 一枚の写真に釘付けになりました『あれ?この前の??』
それはあの女学校の教師をしていたと言う曾曾お婆さんの写真でした。
夢うつつの中、看病してくれたあの老婆は、曾曾婆さんだったのか?!
その子が写真をよく見ると厳しい様に見え、なんとなく微笑んでいるようにも見えました・・・・。
『ありがとう』
その子は心の中でそうつぶやき、屋敷を後にしたという事です。
終。